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2008.07.24

ペレを買った男。

当ブログの右下に、唐突に簡単な紹介文を載せました。久々に面白い映画を見たという感想です。サッカー好きでなくとも、なかなか深く考えさせられる映画ではないかと。

『ペレを買った男』という邦題が付いていますが、原題は『Once in a Lifetime』。直訳すると"一生に一度"という意味になりますが、拡大解釈すると"奇蹟の一瞬"みたいなニュアンスがあるのかな…と考えてますけれど。

で、邦題のお陰でペレがクローズアップされている映画に思われがちですが、これはアメリカに存在したニューヨーク・コスモスというプロサッカーチームの一代記というのが妥当です。確かに、コスモスにとってペレという存在は大きいですし、ペレ自体がサッカーの象徴とも言える存在なのではありますが、管理人は「登場人物の一人」という解釈をしております。

これも登場人物の一人ではありますが、中心に描かれているのはスティーブ・ロスというオーナーです。

Ross

ただ、創始者であるロスの話があったとしても、そんなに彼のオーナーぶりが目立つ感じではないですね。センセーショナルに描くんであれば、確かにロスなりペレなりをデフォルメした方が良さそうですけれど、見終わった感想としては「コスモスに関わった人達の悲喜こもごも」という感じだったでしょうか。結果的には、それが効を奏した気がしています。

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映画の内容とロスという男について、そしてニューヨーク・コスモスというサッカーチームがどういうモノだったかは、下記のリンクを参考にしてください。

・『ペレを買った男』 公式サイト

・ニューヨーク・コスモス ※Wikipediaより

古くからのサッカーファンにとって、コスモスというのはなかなか感慨深いチームでして。

まずは在籍した名選手が粒揃いだったのは、今でも驚嘆に値します。例えば、この映画に出てくる選手としてはペレベッケンバウアーカルロス・アウベルト(※70年メキシコW杯時のブラジル代表主将)、キナーリア(※元イタリア代表)。他にもニースケンス(※オランダ)、フリオ・セサール・ロメロ(※パラグアイ人初の南米最優秀選手)…などなど。

Pele

Beckenbauer

映画の中でキナーリアが語ってますが、今で言うレアル・マドリーとかマンチェスター・ユナイテッドの様な豪華絢爛なメンツが揃っていました。現在の欧州のビッグクラブがメンツが豪華なのは、ボスマン判決に よって外国人選手(EU内に限るが)の枠制限が撤廃されたからこうなったのではありますが、コスモスの時代は世界的に外国人枠が規定されていた事があり (注:国代表のレベルを上げるという側面をクラブも持っていたために、自主的に規制がかかっていた)、こういったドリーム・チームを作る事は非常に難しかったんです…特に欧州市場では。

まぁ、世界サッカー界の主流ではなく、かつ巨大な資本主義社会だったアメリカだから、こういうチームが出現したと言ってもイイかもしれない。なりふり構わずに金の力に任せてスーパースターを投入するやり方…これはアメリカの典型的なやり方ですし、コスモスもその例に漏れない。

コスモスを見て、他のチームも色んなスーパースターを獲得し出します。80年前後には、ヨハン・クライフとかジョージ・ベストとかボビー・ムーアとかゲルト・ミュラーとか、20世紀のサッカー史に名前が残る人達が北米リーグでプレーしていました。その豪華絢爛さは、現代の欧州のビッグリーグにもヒケをとりませんでした。

まさに一瞬の輝きを見せたんですな>北米リーグ。

また、現代サッカービジネスの萌芽をコスモスに探る事もできます。先程書いた「著名選手の獲得」という部分もそうですし、あるいはテレビの三大ネットワーク(=ABC)を巻き込んだメディアミックスの戦略もそうですが、アメリカでは当たり前の事だったかもしれないけれど、サッカーの世界では画期的な出来事でした。

余談になりますが、以前に『W杯ビジネス30年戦争』というノンフィクションを紹介した事があります。ここに記述されてますが、電通が初めてサッカーをビジネスとして取り込んだのは77年のニューヨーク・コスモス来日(所謂"さよならペレ")が最初です。W杯の商業主義化、そして日本サッカーのプロ化などに多大な影響を与えたと言っても言い過ぎでは無いでしょう。

ただ、悲しいかな、アメリカのサッカーブームというのはメディア主導で進んでいた事もあり、ブームが去ってからは終焉までが一気にやってきました。コスモスも、ワーナー・ブラザースが巨大な資本を投じていましたが、その親会社自体が様々な経営危機に遭遇した事もあって、市場からの撤退を余儀なくされました。

自国選手が育たなかったり、サッカー文化(←特に白人社会に)の土台がなかっただけに、本当に脆かった。コスモスだけでなく、北米リーグ全体に言える事です。

しかし、2008年の現代、このブームの最中にいた子供たちの間から(男女問わず)才能豊かな米国代表選手が現れるなど、米国サッカーのレベルが底 上げの要因にもなりました。米国W杯(94年)の開催は、FIFAが巨大市場としてのアメリカを意識したのではありますが、北米リーグ発足によってサッカーの下地が出来た事も遠因にあるんじゃないでしょうか。

…上記のようないろいろな史実を考えながら映画を見ると、なかなか感慨深いと思われます。

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自分の知る限りの北米リーグの話なんぞを書いてきましたが、映画の感想の部分にもう少し突っ込んでみます。

邦題が『ペレを買った男』なワケですが、正直言いますと、映画の前半こそそんな感じなのかもしれませんが、後半になるとまったく別の映画に見えます。だからこそ、"ペレではなくコスモスの映画"と書いたんですが。

管理人認定の後半の主役…それがキナーリアです(笑)。

Chinaglia

この人、人望が全く備わって無いのか、他の出演者(コスモスの当時のフロントや同僚)にボロクソに言われてますね。そして、監督がキナーリアを「話の流れに沿って悪役に仕立てよう」と思ったのか、キナーリア自身の語りの部分がどす黒く見えてしまうと云う始末でありまして。

本当に「コスモスを崩壊させた随一の原因」というくらいにまで言われていて、その様はまるで"キナーリア糾弾ドキュメント"と勘違いしてしまうくらいに酷い。

そんなんだから、ジョー・ロスもペレも全く目立たない(苦笑)。いっその事、邦題を『コスモスを壊した男』にしてもイイんじゃないかと云うくらい(爆笑)。キナーリアの件に関して発言した関係者が、全てムキになって怒っているのは凄かったなぁ。

単なる思い出話に終始する前半部分と違い、後半の"キナーリアの糾弾"には人間のドロドロとした感情が噴き出していて興味深いです。

カメラを意識しつつすまし顔を見せていても、人間の感情が素直に吐露される瞬間がドキュメンタリーにはあります。そのふとした瞬間がハッキリと描き出されているという部分で、ドキュメンタリー映画として秀作だと思うわけであります。

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TSUTAYAなどでレンタルも開始されましたので、興味のある向きは是非ともご覧あれ。

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