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2007.04.01

Ry Cooder / My Name Is Buddy

これは傑作!

本年の私的ナンバー1は決定かも(笑)。個人的にはこういうライ・クーダーを聞きたかったんだよね。ファンの間でも評価が高いみたいだけれど、素直に納得できるな。

  Buddy2

前作の『Chávez Ravine』『Buena Vista Social Club』の延長線上でキューバ音楽にシフトした感じの音楽でした。ライ・クーダー自身がその時期に最も興味のある音楽をダイレクトに反映させたのが前作だったのでしょう。

チャベス〜の項で、ライ・クーダーという人が「サントラ契約しかできなくて本来の意味でのリーダー・アルバムが作れなかった」という話を書いたけれど、その所為か「素材を組み合わせる」という異能は発揮していたけれど、本人がリード・ヴォーカルを取っている曲が少ない事に象徴されるように、彼本来の持ち味が薄味に聞こえるという印象を持っていました。

しかし、今回は違う。

これぞライ・クーダーの真骨頂。

まず音の面に触れますと、彼がここまで培ってきたアメリカのルーツミュージックをふんだんに取り入れている事に気付くでしょう。フォーク&カントリーあり、ブルースあり、ロックあり、ジャズの弾き語り調あり、テックスメックスあり、沖縄民謡あり…という感じ。彼の周りをジム・ケルトナーとかヴァン・ダイク・パークスとかフランコ・ヒメネスといった旧友であり音楽仲間でもある人達が支え、伝説的フォークミュージシャンであるピート・シーガーとの共演もあったりと、バラエティに富んだ構成になってます。

長年のライ・クーダーファンにとっては『Get Rhythm』(87年発表)以来、待ち続けてきた音であると言えるでしょう。

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アメリカ特有の音楽に私はいつも興味を抱いていた。別々の街で人々が座り、曲を書き、自分たちの楽器を演奏したのかと云う事に。人々がどのようにしてああいった曲に辿り着いたのか、どのように身につけていったのか、誰にギターやバイオリンの弾き方を教えてもらったのか、どうやって持ち方を学んだのか。そして20マイルかそこら離れた街から街へと伝わるごとに、音楽はどのように変わっていったのか。言葉がそうであるように。そして、レコーディング音源が出来る前に、それがどのようにして全米中に浸透していったのかという事に。
※本作のライナーノーツ(文・ライネル・ジョージ)にあるライ自身のコメント

前作に引き続き、今作もライ・クーダー自身が創作したストーリーがアルバムを通して展開されています。簡単に書くと「労働者階級を中心とした、アメリカの市井の人達の物語」なんですけれど、例えば『赤狩り』の匂いとか、アメリカの民主主義というモノに対する疑問があったりします。

しかし、単純に反体制を歌うわけでは決してなく、市井の人の生活を事細かに綴る事によって、何かを浮かび上がらせようとしている…そんな趣が感じられます。

何故、ライ・クーダー自体がそういうところに導かれたのかという、その理由が先程に抜粋したコメントの中に隠されています。彼自身がアメリカのルーツミュージックを探求していくうちに、そこに歌われている登場人物の事に思いを馳せるのは当然の帰結とも言えます。

ブルースやジャズは、歴史的に見ると黒人達の癒しからスタートしたモノ。フォークは一般大衆の癒しの曲。テックス・メックスもまた然り。そして、その中に歌われている内容に想いを馳せた時に、ライ・クーダーなりに現代アメリカと照らし合わせて見える(見えた)モノがあったのではないかと。

彼自身が意図したかどうかは解りませんが、そこには"日本以上に二極化されたアメリカ社会の縮図"が現れているような気がしてならない。

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何処かに素晴らしい場所がある
何処かに素晴らしい場所がある
それが見つかるまで 俺は休まない
何処かに素晴らしい場所がある

何処かにもっと愛に溢れる場所がある
何処かにもっと平和に溢れる場所がある
それが見つかるまで 俺は休まない
何処かに素晴らしい場所がある

いい仕事を持った人達がいる場所
大勢の良き共に囲まれた人達のいる場所
小さなスーツケースを持って
小さな家族を連れて
その素晴らしい場所に行ってみよう

※There's a bright side somewhereより引用(木村麗子・訳)

市井の人達は、大それた成功を夢見る向きも当然いる訳だけど、最低限のラインとして上の歌詞のような平穏を求めて生きている訳です。単純に不平・不満を言うだけではなく、「限られている現状の中でとどまってやろう」という意志も見え隠れします。

ライ・クーダーが綴る物語の登場人物が逞しさを持って生きている証が、最期の「オチ」の様な曲に集約されているのではないかな。そして、こういう「オチ」をキチンと付ける事で、彼自身の批評眼というモノが優れている事も裏付けられるのではないだろうか。

音楽を持って、社会を映し出す…さもすれば「ポピュラー音楽の理想」とも言えるべき事柄が、彼の音楽には反映されています。彼は、単純に「懐かしい音楽を発掘」しているだけでは決してないのですよ(断言)。

それを今回も痛感しました、ハイ。

【今作に興味のある方へ、追記をひとつ】
今作は、できれば「歌詞と"中に入っているブックレット"」の対訳が同梱されている日本盤をお買い上げになっていただきたい。海外盤と日本盤だと1,000円くらいの価格の開きがありますが、日本人にとってはシッカリした対訳をジックリと読まないと理解できないアルバムなのではないかと思われます。

「何故にアルバムの表紙が"ネコ"なの?」という疑問も、対訳を読む事で理解できるでしょう(笑)。

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コメント

検索から参りました♪
こういう新譜をよもや出すとは思っていませんでした。
「映画のサントラの人」みたいな印象でしたもん。
傑作アルバムですね!

投稿: motti | 2007.04.22 18:51

motti様>

ようこそ、辺境の地へ。
コメントだけでなく、
トラバもありがとうございました。
これからもご贔屓に。

>こういう新譜をよもや出すとは思っていませんでした。

前回のアルバムが肩慣らしだと思えば、
いつかは出すとは思いましたけれど、
2年という短いスパンになるとは。
それだけ、レーベル(ノンサッチ)との関係も
上手くいってるんじゃないかと、
そんな事を想像できますね。

>傑作アルバムですね!

セールス的にどうかといわれたら、
現状ではなかなか難しいんでしょうけれど。
それでも人の印象に残るアルバムに
なるだけの資格を持った作品でしょうね。

NINがあるのでアレですが、
管理人にとっては、
"今年の一枚"に推すべき作品になりそうです。

投稿: kikka | 2007.04.23 02:00

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