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2006.12.30

資生堂宣伝史。

いよいよ年の瀬も押し迫って参りました…皆様、いかがお過ごしでしょうか。

唐突ですが、CM収集癖がある管理人の「今年の大きなニュース」を振り返ってみると、あるメーカーのCMにいろいろと心を揺さぶられたというのがありますな。

いやぁ、本当に資生堂のCMには一喜一憂したわ(笑)。

TSUBAKIのCM
の駄作度にガッカリして、『新しい私になって』で大興奮して、挙げ句の果てにはかの企業広告エントリーでの検索が増えたり外部リンクを貼られたり、そして何と「資生堂内部」から当ブログにアクセスがあったと(苦笑)

そんな資生堂のCMファンとしては本望な1年だったわけですが、そんなCMヲタがマニア羨望の商品を入手してしまったのは9月の事でしたでしょうか。

チョコチョコと話には出していましたが、『資生堂宣伝史』というビデオ2本・広告資料2冊というパッケージを、ついに手にしてしまったのですよ(嬉)。

 Shiseidoad_1

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『資生堂宣伝史』の話をする前に、どうして管理人が資生堂のCMにこだわるかを話さなきゃならんでしょうね。

10数年前に某雑誌社の広告部に在籍して「週刊誌の進行と校正業務」を担当していたことがありました。その広告部が「3S (資生堂・サントリー・SONY)の広告が常時掲載されるような雑誌を目標にしていた」というのがあったんですよ。

当然、3Sの広告を取り扱うときは神経質になってはいましたけれど、同時に3社の広告原稿のセンスの良さに惹かれるモノがあったりもしたと。で、奥底に眠っていたヲタの血が吹き上がってきて、かの社のCMに関する資料を図書館等で調べるようになったんですわ(※書物が余りに高価で、買う気が薄れてしまうんですよw)。

ネットが無法地帯的な進化を遂げているお陰で旧作のテレビCM動画が手に入るようになりましたが、なかなかビデオ普及以前の作品までは入手できない。懐かしのCMを紹介するような番組があったとしても、くだらない出演者のナレーションが入ったり、スポンサーを気にしつつ断片的な紹介をする程度なので、なかなか完全版というのは手に入らない。

そこで『資生堂宣伝史』の登場(91年)でございます。

この作品集って、制作関係者と図書館などの公共機関に配られ、一部の社員には販売された(※ごく少数だった様子)けれど、一般向けの販売は一切無かったという所謂「非売品」なんです。

内容は下記の通り。

1:1961年〜91年までのTV-CM集
(120分テープ2本組…360本くらいかな?)
2:1979年以降のデザインを扱った総合編
(広告ポスター・パッケージ・店頭ディスプレイ等)
3:セルジュ・ルタンス(仏の写真家)の作品集
(INOUIなどに代表的される、広告の写真集)

Sayuri Yakusimaru

Mg52_1 Atsuko

Asami Doll

どれを眺めても「マニアが溜め息を付いてしまう」ようなラインナップで、全く見飽きることがないんですよね。特に1番に関しては「管理人が永久保存を目論んで、編集用にMac Proを買ってしまう」というくらいに素晴らしい作品が並んでいると(笑)。

作品集の中で印象に残ったモノについて、少し話しましょうか。

まずは、秋川リサが出演のCMにグッと来ました(笑)。彼女は主に石鹸を始めとしたトイレタリー製品のCMに出演していたのですが、そのあっけらかんとしたキャラクターが「(例えば)石鹸を使った楽しい生活」を表しているようで好感が持てます。

資生堂内部でも彼女の起用というのは(あのキャラクターだけにw)かなり物議を醸したらしいのですが、結果的にCMが好評を博して69年から5年近く石鹸等のイメージキャラを務めたという事は、彼女を起用した日本天然色映画(※87年に東北新社グループに吸収される)に先見の明があったという事なのかな。

おっくりものーにはせっけん♪

しせいどーせっけん♪

Risa1_1 Risa3

杉山登志の作品も、ふんだんに盛り込まれています。63年から主力商品である化粧品(ビューティケイクや口紅、サンオイル)だけでなく、ほぼ全ジャンルの商品のCMに関わってきます。ちなみに杉山は、先程も話題にした日本天然色映画のディレクターだったんですが、杉山が関わっていなくともかの社が関わっていた資生堂のCMというのは80%以上あったのではないかと。

例えば「MAKE UP TOKYO」とか「ほほ、ほんのり染めて」といったキャッチコピーを効果的に駆使したり、来宮良子のナレーションを使い、シットリと、さり気なく、更に格調高く見せる構成…資生堂のイメージ戦略に合致したモノをこのCM制作集団は数多く輩出していく事になっていきます。

日本のCMを「単なる商品紹介の映像から芸術作品の域へと昇華させていった」のは、間違いなく日本天然色映画の功績です。と同時に、資生堂の初代社長・福原信三「商品を以て、全てを語らしめよ」という理想と制作者側の作風とが上手くリンクしていた事が、結果として日本CM界の発展につながっていったんでしょう。

Beautycake Syfonet

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で、そんなCM集を、23日の土曜日にすぴぞう君と眺めたアルよ(←彼に倣って、インチキ中国人風に)。

彼は基本的にアニヲタ(苦笑)だからCMに関して含蓄深いわけではないんだけれど、そんな彼でも食い入るように眺めていましたねぇ。

杉山登志の作品だけでなく、いろいろな作品に唸ったり溜め息をついたり…そんなんの繰り返しでしたな(笑)。ただね、CMに殆ど興味がない人間が見ても羨望の眼差しで見てしまうくらいに、資生堂CMの訴求力というのがかなり高いレベルにあったという事も逆に言えるのではないかと。

吉永小百合(ティーンズ化粧品のCM)や薬師丸ひろ子(実相寺昭雄が監督した『初恋』というタイトルの企業広告)に管理人が萌えたり(笑)、オリーブ石鹸の子供の行進に笑ったり、団二郎や草刈正雄の姿(※MG5のCMね)を素直に格好いいと思ったり、楽しい時間を過ごしました。

すぴぞう君がCMに影響されて、「帰りにMG5を買っていく」と言い放ったのには驚きましたが(爆)。

そんな中でお互いに感じた事があったのですよ。

78年辺りからはそんなに面白くないなぁ。

懐かしさを感じこそすれ、例えば杉山作品とかに比べると「感心する」という意味合いのコメントが互いに少なくなっていったんですよ。

素人なりに、簡単に分析してみましょうか。

70年代後半に入ると、CMソングとのタイアップ化が目立ってきます。代表的なところで言えば『サクセス』(ダウンタウンブギウギバンド)とか『時間よ止まれ』(矢沢永吉)とか『君の瞳は10,000ボルト』(堀内孝雄)とか『燃えろいい女』(ツイスト)とか『微笑の法則』(柳ジョージ)とかね。曲自体が名曲揃いですから、見る側の印象に残るのは当然ですね。

ただ、CMの質…主に構成とかなんですけれど、曲やコピーのインパクトに頼り切ってしまう比重が高くなってきます。

70年辺りにも資生堂は、例えばMG5のCMで岡林信康の『自由への長い旅』を使ったりしてましたが、それは当時の若者(男性)の顔をいくつも映していくという、非常に時代に即したメッセージ性を感じる事ができる映像でした。「70年代を迎え、世の男性にどういう商品を提供していくか」という方向性が感じられたりしました。

しかし、そういった消費者をアジテートする色合いが、年代が進む毎に段々に失せていきました。それはタイアップ音楽だけではなく、専属モデルの代わりに有名芸能人が多数出演していく流れからも同じ様な事が想像できたりしました。

結局、音楽や芸能人が与えるインパクトに、作品自体が負けて来ちゃってるんですよ。

優れたCMってのは、あるいはCM各賞にノミネートされる作品ってのは、やっぱり作品としての骨格が、素人目に見てもシッカリしてるんですよ。ストーリーにしても、撮影にしても、映像作品を作る意欲が溢れてくるくらいのモノなんですよ。仮にヒット曲や有名人が出演したとしても、彼らの存在感に負けないくらいにシッカリしている…作品自体を楽しむ事ができるんですよ。その割合が、70年代くらいまでの作品の方に多いのではないでしょうか。

逆に、80年代以降のCMというのはスポンサーが納得できるような「当たり障りのない作品」が増えた様な気がします。「消費者の購買意欲をそそるんじゃなくて、クライアント企業が満足できるという方向に振り子が動いている」というとオーバーですが、少なくとも消費者が感情移入をしてシナジー効果的なモノが生まれる度合いが減ってきています。それは21世紀に入っても同様です。

今年、資生堂は『新しい私になって』という起死回生のCMを世に送り出しました。これは企業として岐路に立たされている資生堂自身が、原点に返るつもりで送り出したモノだと解釈しています。

管理人は化粧品と縁遠い男ではありますが(苦笑)、それでも資生堂ファンとして「世間をアジテートするような作品」を生み出していって欲しいと祈る次第であります。

そして、それに引きずられるようにして各社が面白い作品を制作し合い、CM業界、ひいては消費者である僕たちの日常に、新たな色を付けていって欲しい…などと生意気な事を考えている次第です。

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