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2006.08.17

スゲェな、この人は。

誰かと言えば、談志師匠の事でございます。

 Iemoto

僕程度の人間が語ってしまう事じたいおこがましいですし、世間にはいっぱいディープな「立川談志シンパ」がいらっしゃいますから、興味のある向きはネットで検索しつつ参考にしてほしいとは思います。

が、とある筋から談志師匠出演のラジオ番組の音源をいただきまして、それを聞いて思うところがあったので、無理を承知で書いてみたいと思ったのでした。

先月末に上京した時に、こちらに書き込んでくれている"斑牛の伊達"くんと飲んだんですが、その際に「談志師匠の素晴らしさ」について話したりしたんです。確か「落語家の了見って何だろう」という話が発展して、その象徴的存在として談志師匠をネタに引っ張ってきたという感じだったと思いますが。

その際に伊達くんが、伊集院光の深夜ラジオ番組(TBSラジオの『深夜の馬鹿力』)に出演した時(※98年12月14日)の談志師匠のエピソードを教えてくれまして、その音源を浜松に帰った後に送ってきてくれたんです。ホント、伊達くんには感謝しています、ハイ。

本日、ジックリと聞いてみたら非常に面白くって、談志師匠の生き様というか芸事に対する真摯な姿というのか、そういったモノが解りやすく提示されたような気がしています。もちろん彼の全てではないにしても、元・落語家である伊集院の解説が付いた形だったので入り込みやすかったです。

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最近は亀田興毅の話で脚光を浴びてしまいましたが(笑)、彼の特徴としてまず挙げられるのはその破天荒に見える言動だと思います。ただ、それってのは破天荒に見えるだけであって、実は彼なりの行動論理や倫理観から成り立っているモノだと考えています。

要は、世間の尺度と彼の考えが合わない事が多いというか、彼自体が「こちらの予想を上回ったところにいる」だけの話で、改めてジックリと彼の話を聞いてみると「こちらの痛いところを突かれる」という所に遭遇することが多いです。

談志師匠の提示した意見にこちらがどう反応するか、それは人それぞれだとは思いますけれど、まるで''リトマス試験紙''のように「どう反応するか試されているんじゃないか」なんて事を想像したりもします。実際、賛否両論あるでしょうけれど、それすら彼の手のひらの上で転がされていると云った印象に結びついてしまいます。そのくらいに彼の話芸というのは圧倒的だし、天才的だと思っています。

それは彼が落語をしている時も漫談をしている時も、そして世相講談をしている時も、全く変わりありません。こちらの抱いている(チンケな)価値観とやらに、グサッと突き刺さってきたり踏み込んできたりするのはどの場面でも同じです。

ラジオ番組のエピソードで言うと、伊集院が「談志師匠の(若かりし頃の)落語を聞いて、自分は落語家の道を諦めた」って有名な話を紹介するんだけれど、師匠は「それってネタだろ?」とか「辞めるキッカケを探していたみたいな言い方だなぁ」ってアッサリ言い放ってしまう。そして「身につかない芸を突き詰めるより、(伊集院の)体型が笑いの元になっていたんなら、そちらを突き詰めた方が良かったんじゃないか」とグイグイと迫ってくる。

その他にも、「センス」に代表される持って生まれたモノへの信頼感を強めていく事、自分の置かれた位置でどう立ち回っていくかという状況判断が重要だという事を、終始匂わせるような言い回しをしていきます。

彼は、いろんな問題発言をしてお騒がせする事が多い人です。例えば、30年くらい前には沖縄開発庁長官に任命されて36日間で辞任してますし、世間が騒ぐ事にはわれ先にクチを突っ込むという事も多いです。節操なく見えるかもしれませんが、彼にとっては「オレは落語家だから」という一言で全て片付いてしまったりします。

それは言い訳でも何でもなく、師匠の天職であろう「落語家」という商売が第一義にあり、優先されるべき事柄であり、その立ち位置に真摯な態度を示しているという事が、逆に言えないでしょうか。

僕が談志師匠に惚れ込んだ理由ってのは、まさにその部分です。

僕が東京在住時(大学時代)に、日本テレビの深夜番組で『家元ショー』ってのをやっていました。世間の旬の話題をネタに大喜利みたいな討論会をしてみたり、長嶋茂雄や小室直樹など自分の琴線に触れるゲストを呼んでトークをしたり、振り幅がもの凄く広い番組でした。そして、ここでの師匠が颯爽としていてカッコ良かったんですわ。

番組を見て感心していたのは、どういう状況になっても自らの立ち位置を崩さないという事です。そして、自信に裏付けられた発言だけに説得力もある。

当時、自分の進路などで非常に迷っていた時期でもあり、何か拠り所を見つけたいなと思った時に、誰にも有無を云わせない圧倒的な存在感を見せていた談志師匠に憧れていくのには、さほど時間は要りませんでした。

それからは、時間とお金があれば(極力)高座を見に行き、彼の著書を読んだり、出演している番組をウォッチしたり、そんな時期がしばらく続きました。東京から戻ってきた時に情報量の少なさもあり途絶えてしまいましたが、それでもCD-BOX(第一集)を買ったりしてました。

とにかく「談志師匠のたたずまいさえ感じられれば、それだけで満足できた」という時代が、僕には確実にありました。

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師匠が落語とか芸事を語る際に"イリュージョン"という言葉をよく使います。国語辞典で意味を調べてみると「幻影、幻想、錯覚、幻覚」って事ですが、彼の場合は「人間の本能に訴える」という事にかけている様です。

人が日常生活を送るにあたって、常識を身につけて行くわけですが、それは人間の生まれ持った本能に対して無理矢理に覚えて詰め込んでいく事柄だから、不自然ではないかと。そのバランスを取っている代表的なモノが「夢」などであり、落語も非日常やナンセンスを謳いつつ、最終的には人間の本能に訴えるモノを作っていくべきではないか…というのが彼の主張と解釈しています。

伊集院のラジオで、リスナーからのハガキを元にした、こんな掛け合いがあったので紹介します。

伊集院:1999年の7月に、「恐怖の大王が降ってきて大惨事が起こる」と云われていますが、それに備えて何を用意していればいいでしょうか?

談志:(あっさりと)睡眠薬でしょうねぇ。

イイよなぁ、この了見(笑)。普通の芸人だったら「災害に対応できるモノ」をひねって何か言うんだろうけれど、「睡眠薬」ってのがイイねぇ。談志師匠が続けて言った「寝ちゃえばいいんだよ」って理由が最高。要は「死んじゃえばそのまま目を覚まさず、生きていれば起きる」っていう事なんだけれど、これは常識では考えないよなぁ。

他にも、まさにイリュージョンを地で行った噺が番組内で続いていくんだけれど、あまりにも意味不明で紹介できない(笑)。でも、速いテンポで噺(※ホラ話とでも置き換えられるかな)が続いていくから、噺のふくらみ方でけっこう笑えて来ちゃうし、どうしてそんな想像が出来るのかという意外な展開にもなるし、聞いている側も演者同様に気が抜けないんですわ。

今の芸人で言えば、ダウンタウンの松本人志爆笑問題の太田光の話芸、『内村プロデュース』のクイズ形式の掛け合いなどを想像していただければ、通じるところがあるかもしれません。

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とにかく、この人の事を考え始めると、いろんな想像が沸いて来ちゃって収拾が付かなくなっちゃう(笑)。ここまで書いたけれど、どれだけ解りやすく伝える事が出来たか不安です。

それだけ、ラジオ番組の録音だけでも、脳内がグッチャグッチャになるくらいに感じる事が多かったという事ですわ。たかだか30分くらいの露出なのに、アレコレと考えを巡らさせてくれるんだから、やっぱり談志師匠は凄いわ。

下記のリンクで、彼の面白い世相斬りが見られます。是非、一度訪れてみてください。で、気に入っていただけたら、高座に行ったり、著書やCD-BOXも買ってみてください。

立川談志 STREAM CONTENTS

談志・陳平の言いたい放だい 過去放送一覧

…取り敢えず、僕は上記リンクの動画を捕獲する事に精を出す事にします(苦笑)。

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コメント

ここで家元からヒントをもらった連想が連想を生み、いつの間にか最初のイメージからどんどん懸け離れた物にイメージが連鎖していくイリュージョン理論が、変死隊の『走馬燈 SO-MA-TO』に繋がっていくわけです。

ドブスばかりのラクロス部♪

投稿: 斑牛の伊達 | 2006.09.02 03:38

投稿: kiosk | 2008.02.18 11:06

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