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2006.03.27

怒濤の電気マイルス。

先のエントリーに書いた「脳内がグッチャグッチャになるような音楽」ってのは、マイルスの事です。

もう、最近は電気時代のMiles Davisばっかり聴いている。

出勤&帰宅の車中では、マイルス一派が攻めまくるという"怒濤の電気サウンド"を「これでもか!」と言わんばかりに毎日堪能している。

その中でもよく聴いているのがこれ。

MILES AT FILLMORE:LIVE AT FILLMORE EAST

 fillmore

まずはバンドのメンツを記載しておこう。

Miles Davis / trumpet
Steve Grossman / soprano sax
Chick Corea / electric piano
Keith Jarrett / organ
Dave Holland / electric bass,acoustic bass
Jack Dejohnette / drums
Airto Moreira / percussion

今作品に収録されているのは「70年6月17〜20日のフィルモア・イースト」でのライブ。1セットがだいたい25分から40分くらいの時間で行われていたという事で、当時の様子が全てとはいかないまでもおおよそは掴める構成にはなっている。

初めてキース・ジャレットがバンドに参加したという、マイルス史的に見てもジャズ史的に見ても歴史的な瞬間でもある。後にフィット感の問題とか互いの力関係の問題などでチック・コリアは脱退する訳だが、ここでのツイン・キーボードという配置はグルーブ感を高めるのに効果を上げている。チック・コリアのフェンダーローズが痛いほどに突き刺さってくる。

それと、ドラムスのジャック・ディジョネットの嵐のようなドラミングも特筆すべきだろう。ブログ内で何回か触れた事があるが、60年代後半〜70年代にかけてのマイルスの変化として最も顕著だったのはリズム認識の部分かと。それに最も貢献していたのは、ディジョネットのような優れたドラマーだろう。

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それにしても、ロックの殿堂にジャズの王様が登場したという出来事は当時としてはセンセーショナルな事だったろう。

ライナーにも書かれていたが、ビル・グレアムという稀代の興行師が、例えばジミ・ヘンドリックスとかデッドとかと同じステージにジャズミュージシャンを出演させ、幅広い音楽性と先鋭的な感覚を持った世界観を作り上げた事は、後の音楽の流れにとって多大な影響を与えた。
(※ちなみに『地獄の黙示録』でプレイメイトを引き連れていた胡散臭そうなオヤジ、あれがビル・グレアムです)

そんな大きな流れに、マイルスも乗っかったというところは正直あるだろう。ジャンルは違うけれど、同じ黒人ミュージシャンのジミとかスライ・ストーンとかに影響を受け、大胆に電気音楽を導入してこれ以上ないグルーブ感を作り上げた。

もちろん、バックにいるメンバーもシッカリしていたからこそ、大きな流れを乗り切る事が出来た。ウェイン・ショーターやハービー・ハンコックを始めとして、今作のメンバーやジョン・マクラフリンなど、腕に覚えのある者がマイルスの元に勢揃いした事があったからこそ、大胆な変化ができたのだと。

フィルモアの客は、たぶんマイルスがどんなミュージシャンだったか知らない若者ばかりだったろう。当たり前だけれどサイケ・ミュージックに浸り切りの連中だったろう。そうした客を圧倒的な演奏でKOしてしまった事は、CDを聴いていれば容易に判断できる。

どの曲も素晴らしいのだが、特に最後の「土曜日のマイルス」の演奏…その中でもBitches Brew〜Willie Nelson/The Themeという流れは圧巻。

初めて聴いた時に、先のエントリーで書いた「ウッドストックのジミヘン」を思い出したのだった。不調なジミに比べるとマイルス一派は絶好調な演奏だっただろうが、何も考えられないくらいの圧倒的な音という意味ではどちらも甲乙付けがたい。

マイルスがジミとセッションをやりたがっていた…約束も取り付けていたという話は有名だが、違うジャンルから攻めても同じ様な怒濤の音楽を展開していた事は、どちらがどう影響を受けたというのは関係無しに二人の嗜好性が似通っていた事を証明しているのではないだろうか。

オリジナルのライナーノーツでモーガン・エイメスという雑誌編集者が、こんなコメントを残している。

我々がどうであれ、これは自分の中に居場所を見つけようと、そして辿り着こうとしている者のサウンドなのである。

まさに、この時期のマイルスと、彼に影響を与えただろうジミの音は、未開の地に辿り着いていたはずだ。

その一端がうかがい知れるアルバムである事は間違いない。

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コメント

ま、僕は最初のマイルス復活コンサート、
(ベースがマーカスの奴)(25年ぐらい前の)
その頃1万円のチケットで、
前から10列位で、


寝ましたけどね。
ええ、もう30分ぐらい。
ま、「TUTU」はいいですね。
ていうか、その頃のマイルすは聞いてないんでなんとも、、。
そういえば晩年マイルスは、三宅一世のスーツとかがお気に入りだったですね。
それ聞いて、「へーイッセイって凄いんだ」
と逆に感心した事思い出しますなあ。

投稿: 雄三 | 2006.03.27 10:53

雄三様>

彼が75年から一旦休養に入っちゃって、
81年頃に再起のアルバムを出した後になるのかな。
それ以降のマイルスは興味ないんですわ。
よく聴いていればそれなりに味はあるけれど、
ハートをわしづかみって感がない。
ロックファンにとって一番聴きやすいのが、
何度も書いている電気の頃という感じですかねぇ。

>「へーイッセイって凄いんだ」

横尾忠則とか長岡秀星といったイラストレーターが
大物ミュージシャンのジャケット担当になるのと、
同じ感覚ですな(笑)。
一番身近な所から感心をするモノだしねぇ。

投稿: kikka | 2006.03.27 13:09

このフィルモアの曜日別のやつって、かっこいいんだけど、意外と聴いてないですね。
どちらかといえば、下の3つのリンクの中では真中のアルバムの方が好きかな。
どうも編集が気になるんですよね。
でも、リリース当時の状況を考えれば、コンプリートを出しても売れる保証はなかった、というよりレコード会社が嫌がったでしょうから、しょうがないですけどね。

キースは、やっぱりチック・コリアのような相手がいるほうが面白いですね。
セラー・ドアを聴いてそう思いました。
当人同士は嫌だったのかもしれませんが、それもマイルスの狙いだったのかも。

80年代だったら、まだ俺もあまり手を出してないのですが、"We Want Miles"とか普通にかっこいいですよ。
「渦」ではないですけどね。

投稿: piouhgd | 2006.03.27 14:03

pio様>

>意外と聴いてないですね。

mixiの時に書いてなかったっけ?
それで覚えていた気がしてるんだけれど。

>下の3つのリンクの中では真中のアルバムの方が好きかな。

これ、今も売ってるの?
日本盤のラインナップにはないみたいなんだけれど。
聞く所によるとこっちのフィルモア・イーストの方は、
スティーブ・ミラー・バンドとか
ニール&クレイジーホースの前座として
マイルスが登場したらしいじゃないの。
マイルスを目の当たりにしてどう思ったんだろう?

>どうも編集が気になるんですよね。

大丈夫。
フィルモアのコンプリート盤が
2年以内に絶対に発売されるはず(爆)。

>チック・コリアのような相手がいる

これは同感だなぁ。
セラードアの後にフィルモア聴いた形だけれど、
チック・コリアがいる分だけ音が分厚いですよね。
単純にキーボードが倍になったんじゃなくて、
シャツの上に鎧着たような分厚さというか(笑)。
よく考えたら、フィルモアのメンツって、
そのままワイト島のメンツだよねぇ。
あのライブ映像&音も凄かったもんねぇ。

>80年代

復帰後5年くらいはまだ聴けるかもしれない。
でも、ヒューマンネイチャーとか
タイム・アフター・タイムをやった時はきつかったなぁ。
選曲の問題はあるけど、
イージーリスニング的な聞こえ方しかしなかったもん。
pioさん言う所の「渦」からは離れてますねぇ。

投稿: kikka | 2006.03.28 05:28

Kikka さん、
初めまして。
昨晩、トラックバックさせて頂きました。
kikka さんのローカルルールに則って
挨拶はしませんでした。

数あるマイルスのアルバム中でもこのアルバムは 私にとって one of best です。

今後とも宜しくお願い致します。

投稿: NetHero | 2006.03.28 17:32

>これ、今も売ってるの?

一応、普通に手に入るみたいですが、今のところ。
どうなんでしょうね?
その辺、よく分かりません。

>マイルスを目の当たりにしてどう思ったんだろう?

気になりますよね、反応が。
ちなみに"Black Beauty"の時は、Grateful Deadと一緒ですよね?
ジェリー・ガルシアとは意気投合した、とその時の様子をマイルスの自叙伝では語ってました。

>2年以内に絶対に発売されるはず

期待しましょう。(笑)
でも、その前に"On The Corner"がらみのボックスの噂が...。

>ワイト島のメンツ

サックスだけ違うんじゃなかったかな?
ワイト島では、ゲイリー・バーツだし、こっちはスティーブ・グロスマンだったと思います。

>ヒューマンネイチャーとかタイム・アフター・タイムをやった時

でも、もともとジャズ・ミュージシャンだったことを考えると、スタンダード曲やリアルタイムのヒット曲を取り上げる、って意外と自然なことなのかなって最近気付きました。
もちろん、個人的にこの選曲に抵抗がないわけではないのですが。
とりあえず、偏見を取っ払って、いずれは聴いてみようと思っております。

というわけで、久しぶりにフィルモアのライブを聴きたくなって、昨日、オーネット・コールマンを見た帰りにずっと聴いてました。
以前感じた編集についても意外と気にならず、近々自分のところでも取り上げてみようと思っていますので、また改めて。

投稿: piouhgd | 2006.03.29 09:27

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