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2005.08.06

The Band / Tears of Rage

Festival Expressの所為でも、あるいは書き込んでくださっている方々の所為でもないのだが、ここ数日はこの曲をよく聞いているんです。

まぁ、久々に火がついてしまったという事か(笑)。

the_band

アルバム『Music from Big Pink』で颯爽とデビューしたThe Band、そのオープニング曲が"Tears of Rage"(邦題"怒りの涙")だった事は、Festival Expressの項にも書いた。
この曲はBob Dylan『Basement Tapes』にも別バージョンが収録されている(←Dylanが歌った)。
フォークトラディショナル的な感じの後者よりも、僕はThe Bandのバージョンの方が好きなのではある。が、どちらが歌ったにしろ名曲である事は間違いないところだ。

いつもだったら『Music from〜』というアルバム全体について書くのだが、今回はどうしてもこの1曲に絞って書きたいと思った。特にThe Bandのメンバーが"何故、デビュー作のオープニングに持ってきたのか"を考えたかった。それを考える事が、The Bandがどういう意図を持ってシーンに登場したのかが明確に出来るんじゃないかと思ったのだ。

一応、曲が作られた流れを追っていくと、まずDylanとThe Bandの前身・The Hawksが出会ったのが65年だ。だんだん親密になっていく過程で、66年にDylanがバイク事故で休養を余儀なくされる。そこから2年間ほどニューヨーク州のウッドストック近郊にある古いピンク色の小屋の地下室(←Big Pink)に集い、共同で創作活動をすることになる。
この時に録音されたテープがDylanの『Basement Tapes』として後に発表され(76年)、そしてThe BandのメンバーはDylan抜きでもう一度このピンク色の小屋の地下室に集まり、デビュー作を録音する事となる。
そして、記念すべき2作の名盤が生まれた。

私達は独立記念日に
お前を腕に抱えて過ごしたのに
今では私達を見捨てて
遠くへ行こうとしている
太陽の下で生まれた親愛なる娘であるお前が
父親にそんな扱いをするなんて
素直に言う事を聞いてくれたお前が
今ではいつも「嫌だ」と言うなんて

怒りの涙 嘆きの涙
何故 私は泥棒扱いされるのか
解っているだろう すぐにそばに来ておくれ
私達はいつも孤独なのだ
そして 人生はいつも儚いのだから

The Bandがデビューの際にこの曲を持ってきたのは何故だろうか? 内容が内容だけに、いつも頭に思い浮かんでいる。

Music from Big Pinkが発売された68年は、折しもサンフランシスコから全世界に広がっていった「ヒッピー・ムーブメント(フラワー・ムーブメント)」の全盛期だった。ベトナム戦争への反対運動や学生闘争も盛んだったこの時期、若者達は自由を求めて家を出て、マリファナを吸いながら音楽に興じ、誰にも邪魔されない勝手気ままな生活を求めていた。
その影響が顕著に表れたのが「ロックというポピュラー音楽ジャンル」だった。自然回帰という部分に触れるかのように自然の中での野外コンサートが多く開催され、花をあしらった当時の流行の服装同様にカラフルな色のジャケット写真が全盛だった。あるいはマリファナやドラッグを吸引した上での幻覚に頼った形の曲調も多かった。

The Bandがオープニングに選んだこの曲は、先に書いた歌詞でも解る通りに当時の世相に対するアンチテーゼとも受け取る事が出来る。親の側から子に対する願望と後悔を歌ったこの曲は、楽観的に外に出ようとする子供達を諫める心情をも同時に歌っている。
The Bandは5人のメンバー中4人がカナダ人である。だからアメリカを発祥としたムーブメントを案外醒めた目で見ていた感もあり、逆にアメリカのルーツミュージックに惹かれ、かの国の伝統的な道徳観・生活感を基調とした歌を作っていったのかもしれない。

しかし、彼らの曲には彷徨い人を主人公としたモノが多く、それはカナダ人であるThe Bandの面々が(メインストリームである)アメリカを漂っている事とオーバーラップして見える。そんな背景を持つ彼らが、何故アメリカのルーツミュージックに影響され、そしてアメリカの伝統的な考え方を歌にしていったのか?

たぶん"Tears of Rage"の親の心境は、その子供たちが親の立場になった時にも味わう心境だろう。風景は変わっても、いつまでも変わらないモノ=人間が生きる上での真理を追い求め演じ続ける、そんな決意表明があの曲に託されているのではないか。
加えてThe Bandは開拓時代を中心としたアメリカの物語を綴っていく事で、何者にも左右されない確固たる位置を追い求めていたのではないか。
陳腐な表現だが、それが彼らにとっての"約束の地"を求める行為だったのだろう。一過性の流行の中ではなく、綿々と綴られてきた物語の中にヒントがあると考えたのかもしれない。

"Tears of Rage"は同時期の他のアーティストに類を見ることがなく、そしてより強固な思いが感じられる名曲である。ここまでの決意表明を表したバンドは、同時期の他のバンドにはなかなか見当たらない。

最期に触れるが、ユダヤ人であるDylanもThe Bandと同じ価値観を共有していたのでは無かろうか。彼らが意気投合したのはそういう背景があったからだったのか…そんな気がした。

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コメント

この曲を初めて聴いたのはつい最近のことなので、kikkaさんのように思い入れは無いんですが、なんて曲を1曲目に持って来るんだ、って思いましたね。
感じとしては、A面の最後に来ても良いような曲ですよね。
歌詞の内容については全く知らなかったので、曲調だけでそう思ったんですが、こうして内容を知ってみるとますます意味深長な感じがしますね。
CDが主流になって久しいですが、最近ではiTunesとかiPodなどに代表されるようにアルバムの曲順というものの意味がだんだん薄くなってきてます。
アーティスト側にとっては、今でも重要だとは思いますけど。
特にレコードの時代って言うのは本当に曲順ってものが重要だなと再確認しました。

投稿: piouhgd | 2005.08.06 23:51

pio様>

>kikkaさんのように思い入れは無いんですが、

何をおっしゃるんだ、あなたは(笑)。
ちなみに僕が彼らに接したのは、やっぱりDylanの流れからかな。
高校時代にメチャクチャハマったもの。

>なんて曲を1曲目に持って来るんだ

そうなんですよねぇ。
普通、デビューアルバムのオープニングって、
もっとキャッチーな曲を持ってくるでしょ?
その1曲の印象で今後が決まる恐れだってある訳だから。
Big Pinkを最初に聞いた時は、やっぱり引いたもの(笑)。
2作目の方が好まれる理由が解るでしょ?

>A面の最後に来ても良いような曲ですよね。

Basement Tapesでは1枚目のラストの曲ですね。
まぁ、あれはDylanの曲とBandの曲が混在しているからねぇ。

>歌詞の内容については全く知らなかったので、曲調だけでそう思ったんですが、こうして内容を知ってみるとますます意味深長な感じがしますね。

でしょ?
The Bandという人達が、どれだけ異彩を放っていたかが解ります。
訳詞に関しては、exciteの翻訳ページを元にした意訳なので
正しいかどうかは解らないけれど、
おおよそあんな感じだと思われます。
キチンとした日本語訳を知っている方がいるならば、
書き込みorメールが欲しい(苦笑)。

>アルバムの曲順というものの意味がだんだん薄くなってきてます。

一曲に魂を込めるのも、アルバムをトータルで構成していくのも、
どちらもミュージシャンの表現としてはアリなんだけれど、
聴く側の気が短くなっている事も含めて難しくなってんじゃないかなぁ。
それがいいか悪いかは解らないですが、
僕個人としては悲しい事ではありますね。

投稿: kikka | 2005.08.07 00:13

The Band / Tears of Rage

C Am F Dm
We carried you in our arms on Independence Day
Bb F C
And now you'd throw us all aside and put us all away
Am F Dm
Oh, what dear daughter 'neath the sun could treat a father so?
Bb F C
To wait upon him hand and foot and always tell him "No"

(Chorus:)
E7 Am
Tears of rage, tears of grief
F C
Why must I always be the thief?
E7 Am
Come to me now, you know we're so low
F C7 Fmaj7 C
And life is brief

It was all very painless
When you went out to receive
All that false instruction
Which we never could believe
And now the heart is filled with gold
As if it was a purse
But, oh, what kind of love is this
Which goes from bad to worse?

(Chorus)

We pointed you the way to go
And scratched your name in sand
Though you just thought it was nothing more
Than a place for you to stand
I want you to know that while we watched
You discovered no one would be true
And I myself was among
The ones who thought
It was just a childish thing to do

(Chorus)

大好きなバンド、ザ・バンド。
でも、実は私この曲のことはあまり知らないんですよ。
私がよく聴いたのは「The Band」や「Island」なので・・・。
これではファンとは言えませんが。(恥)

この曲を次のサイトで視聴してみました。
http://theband.hiof.no/
※ここは視聴もできてgoodです。
いい曲ですねぇ。まさにザ・バンド。
お小遣いが貯まったら、このアルバムを買ってみようと思いました。

ちなみに私のザ・バンド№1は、
「The Night They Drove Old Dixie Down」
「The Last Waltz」での演奏は、今聞いても、なぜか涙が出ます。

投稿: kiosk | 2005.08.07 17:53

kiosk様>

ところで、あの歌詞の羅列はどういう事?
日本語訳を完全掲載しろっていう無言の抗議ってか!(爆)

…別枠で載せてみますが(弱気に)

>私がよく聴いたのは「The Band」や「Island」なので・・・。

やっぱりそうなんですよね。
キャッチーなのは2枚目以降だと思いますから。
それにしても、「Island」って一番最後のスタジオアルバムやないか(笑)。

僕がよく聞いたのは1,2作目と「南十字星」かな。
Live盤は「The Last Waltz」よりは「Rock of Ages」の方が
The Band自体が目立って好ましいです。

>これではファンとは言えませんが。(恥)

今からでも遅くない…買いなはれ。
amazonだったら1枚980円で輸入盤が買えます。

>ちなみに私のザ・バンド̺1は、
>「The Night They Drove Old Dixie Down」
>「The Last Waltz」での演奏は、今聞いても、なぜか涙が出ます。

Tears of Rage以外の好きな曲を6曲程挙げておきます。
1:King Harvest [Has Surely Come]
2:When You Awake
3:The Weight
4:It makes no difference
5:Acadian Driftwood
6:Bessie Smith

ちなみに1&2は2枚目「The Band(Brown Album)」から、
3は「Big Pink」から、4&5は南十字星から。
南十字星は完全にロビーが前面に出たアルバムですね。

そして6はDylan&The Band名義の「The Basement tapes」から。
ロビーとダンコによる共作なので、多分Bandの曲です。

いろいろと腹黒い部分が取りざたされておりますが、
僕はギターのRobby Robertsonのファンでございます。
80年代以降のThe Bandのリユニオンは一切認めません(断言)

投稿: kikka | 2005.08.07 20:26

>ところで、あの歌詞の羅列はどういう事?
>日本語訳を完全掲載しろっていう無言の抗議ってか!(爆)

>…別枠で載せてみますが(弱気に)

いやいや、単に「こんなんありまっせ。」という程度のもので・・・。
ちなみに、コードが分かると思ったのですが、全部左側に寄っていますね。(笑)
これじゃぁ、意味ないか。

今、日韓戦を見始めました。
これに負けると、次の東アジア選手権は予選からということだそうで・・・。
いっそ出なけりゃいいんだ。(暴言)
なんか、中国と北朝鮮の国威昂揚のための大会だなぁ。
勝っても何にもつながっていかないのに・・・。

投稿: kiosk | 2005.08.07 20:50

kiosk様>

>いやいや、単に「こんなんありまっせ。」という程度のもので・・・。

日韓戦見ながら、件のページを閲覧してました。
いやぁ、ロビーのソロの動画とかダウンロードしちゃったもの(笑)。
日韓戦なんかどうでも良くなってますな(爆)。

>今、日韓戦を見始めました

このスレで書くのは何だけれど、少し書いておきますね。

ジーコも力を入れる所と調整目的の所を使い分ければいいんですよ。
どういうワケか川渕から全権委任されている訳だから、
もう少し気楽にやればいいと思うんですよ。

あの人の試合のやり方って全勝するかの如くだもの。
幸か不幸か、今まで新しいメンバーがことごとく使われてます。
フィットする選手とそうでない選手が解って良いのではないかと。
やっぱりオプションがシッカリしていないチームは先細りになるから。

テレ朝がこんな大々的に煽って報道する必要はないけれど、
日本代表にとっては経験値が積み重なったものだと思いますよ。

個人的には坪井と阿部が面白いなと思っています。

投稿: kikka | 2005.08.07 21:10

TBありがとうございます。
ザ・バンドはカセットテープにダビングしたものしか聞いていなかったので、歌詞にあまり気を回したことがありませんでした。
なるほど、読んでみると深い世界があるような気がします。
まだアマゾンでゲットしていない(笑)のですが、手に入れたらじっくりと聴きながら歌詞の世界に浸りたいと思います。

投稿: tomtomradio | 2005.08.14 12:44

tomtomradio様>

コメント、ありがとうございました。
また遊びに行きますね。

>なるほど、読んでみると深い世界があるような気がします。

Dylanと付き合っていた所為でもないんでしょうが。
彼らの歌詞ってなかなか含蓄深いモノがありますよ。

Dylanの場合は感覚的、あるいは文字通り詩的なモノが多いですが、
The Bandの歌詞ってのはやっぱり物語を綴るって感じかな。
寓話的な内容が多く、けっこう身に染みます。

投稿: kikka | 2005.08.14 23:29

はじめまして。

ザ・バンドのメンバーだった、リヴォン・ヘルムさんの逝去、残念でしたね。
つい最近入手した『Basement Tapes』聴いています。

A面ラストのこの曲「Tears of Rage」
最高ですね。

投稿: りりん | 2012.04.25 21:28

りりん様>

ようこそ、辺境の地へ。
というか、最近は全く更新していないブログに書き込んでいただけるとは、非常に申し訳ない気分であります(笑)。

>リヴォン・ヘルムさんの逝去

これ、全く知りませんでした。
そうかぁ…Bandのメンバーの中で生存者はロビーとガースだけになりましたか。

>『Basement Tapes』

ビッグ・ピンク前夜のBandがあのアルバムから推察しやすいのではないかと。
良い意味で互いに影響を与えあってると思います。

>「Tears of Rage」

帰宅時の車中で聞くというシチュエーションが、なかなかよろしいのではないかと。
シャッフルしているiPodから突然流れてくると、止まって聞いてしまう…というのは、昔から変わっていません(笑)。

投稿: kikka | 2012.04.28 23:02

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'68年という私が生まれた年に1人のアメリカ人 [続きを読む]

受信: 2005.10.14 16:40

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