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2005.08.03

Festival Express(映画評)

カテゴリーを音楽にしようか映画にしようか迷ったけれど、音楽作品という事で書いてみる事にしよう。

いつものレコード屋に頼んでおいたDVD『Festival Express』を引き取りに行ってきた。Grateful DeadJanis JoplinThe Bandなど、アメリカの音楽史に残るアーティスト達の貴重な映像を収めた一品だ。

Festival-Express

昨年末かな、今年初めかな、東京とか大阪など大都市圏で封切られて以来気になっていた映画だった。浜松でも6月辺りにレイトショー上映されたらしいのだが、全く気づかなかった(苦笑)。DVD化を切に願っていたのだが、この度やっと手に入れ、見る事ができた。

まず、パッケージがなかなか洒落ている!

Rabel_1

写真だとハッキリ見えないけれど、昔懐かし塩化ビニールのレコード盤みたいに溝まで入っているのである。コレクターズアイテムとしてもなかなか面白いんじゃないかと思う。見た瞬間に「もう一つ欲しい」と思ってしまったくらいだった(笑)。

さて、本作は1970年にカナダで行われたフェスティバルの記録映像を元に作ったドキュメンタリー映画だ。今までフィルムの所在が行方不明になっていたのだが、突然その所在が明らかになり、2004年にリマスター処理および編集がされた上で無事公開の運びとなった。気になる方はこちらで詳細を確認してください。

では、印象に残った部分をいくつか書こう。

このフェスティバルでも、やはりWoodstockやワイト島と同様に「野外フェスティバルで入場料を払うか否か」で主催者側と観客側との揉め事があったりする。
ヒッピーの時代っぽいなぁとも思えるのだが、僕はこういうシーンを眺める度に当時の観客(若者)の身勝手さを感じたりするのである。あるいは社会主義的な集団暴走とでも言おうか、集団幻想とでも言おうか。
ミュージシャン達は職業として音楽家の道を歩んでいるのであって、それを目の前にして「無料にしろ」というのは何様だと気持ちになる。これは入場料の高低云々の問題ではなく、単純に「反権力」という名を騙った無法である。
だが、それを許容してしまったところに音楽業界がまだビジネスとして成立していなかったという時代を感じるし、ミュージシャンの側も「自分の音楽を聴かせたい」と純粋に思っていたのかも知れない。

DeadやThe Bandってのは僕の好きなミュージシャンなので注目したが、映画を見ていて一番気になったのはJanis Joplinである。ロック史上最高の女性ヴォーカリストと言われる彼女なんだが、その鬼気迫るばかりの情念というか迫力というか、それに圧倒された。
歌詞の内容が孤独を歌ったり、あるいは愛する男性が欲しいとか、そういう内容のモノばかりが多いのだが、その愛情を欲する態度というのが切ないのである。一人の女性の感情をあれだけブルースに込めた人ってのは、少なくとも白人ミュージシャンでは彼女以前も以後もいなかったんじゃないだろうか。
このイベントの3ヶ月後に彼女はオーバードーズ(麻薬中毒)が原因でこの世を去ってしまう。家出してからミュージシャンになりスターになっても彼女の孤独感というのは癒される事がなかった。酒や麻薬に溺れ、行きずりの恋をしても長く続かない。
極論すると、彼女は心を癒すために全身全霊をかけて歌うしかなかったのである。そして「ステージを下りると、再び孤独感に苛まれる」という悪循環の繰り返し。だから、彼女の人生と死を考えると、音を聞いても映像を見ても切なくなってしまう。
ただ、今作では非常に力が抜けているのか、列車に乗っての旅が彼女を安らかにしたのか、比較的笑顔が多いような感じがした。特にJerry Garciaに「初めて見た時から君の事が好きだった」と言われた時の彼女の顔は、非常に可愛らしかった。
もしかすると、最期につかの間の安らぎが彼女を包んだのかもしれない。

今作で一番印象に残った曲を挙げろと言われたら、ボーナスDVDに入っていたIan&Silvia&The Great Speckled Birdというカナダのフォーク・デュオが歌った"Tears Of Rage"(※日本題"怒りの涙")である。
Bob Dylan『Basement Tapes』に収録されていた、あるいはThe Bandの輝けるデビュー作である『Music flom Big Pink』のオープニングを飾った曲としても有名。
「子育てがテーマだ」というMCに続けて綺麗なハーモニーによって演じられたこの曲を観客達はどう受け止めたんだろうか。サイケの時代というのは「Me-ism=個人主義」が横行し始めた時代である。先程書いたように「家を出て勝手気ままに生きよう」とした連中が、家族の断絶を歌ったこの曲を聴いてどう思ったのだろうか。
彼らが思うか思わざるかに関わらず、当時の世相に対して結果的に「痛烈な皮肉になっている」と感じたのは、決して僕だけではないはずだ。

またまだ見所はいっぱいあるし、人によっていろんなシーンに感慨を抱くと思う。とにかく貴重な映像が満載である。是非とも音楽好きの方々はご購入する事をお願いしたい。

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コメント

やっぱりジャニスですかねえ。
まだ見てないので分かりませんが、主役と言ってしまってもいいかもしれませんね。
この間の日曜日にCD屋でちょっと見たんですが、ジャニスの歌っている姿がド迫力でした。
でも、その日は渋さ知らズのDVDの方を選んでしまいました。(笑)
でも、多分これも買います。

投稿: piouhgd | 2005.08.03 12:33

pio様>

>やっぱりジャニスですかねえ。

ものの評によると、
ジャニスの映像の中でも傑出してグッと来るらしいのですが。

Festival Expressというイベントの精神的支柱は、
映画を見た限りはJerry Garciaだと思ったのですよ。
Janisはそれに乗っかっている感じですね。
でも、彼女のシンガーとしての業というか、
女性としての業というのか、それは突出してますね。

単純に容姿だけで言えば、
Ian Tysonという女性("怒りの涙"を歌った)の方が麗しいけれど、
あの歌と普段の姿の落差を見るとJanisを選びたくなりますね。
彼女の叫びが切なく聞こえて、何かしてやりたくなります。

投稿: kikka | 2005.08.03 13:01

TBありがとうございます。
フェスティバル・エクスプレス、ジャニスの印象が強くって、他の映像が霞んでます(笑)。いや、ほかにもシャ・ナ・ナで笑わせてもらいましたけど。
ジャニスはカセットテープに入れたものを擦り切れるほど聴いていましけど、当時はアーティストの動く映像を見る機会なんてあまりなかったので、今回のジャニスの映像でジャニスはやはり凄いシンガー、でも可愛い人だなってことがよくわかりました。これを機会にCDで買い直す(いや、初めて買うって事だけど)つもりです。私って単純ですね、ライブ8でピンク・フロイド見てCD買ったし。。。
パッケージもLP世代の私には懐かしくていい感じ♪
音楽好きなら是非見てもらいたい映画ですね。

投稿: tomtomradio | 2005.08.03 13:54

tomtomradio様>

>ジャニスの印象が強くって、他の映像が霞んでます(笑)。

その危険に陥りそうだけれど(笑)、
デッドもバンドも彼らなりにイイ演奏だしたね。
デッドなんかはユルユルで僕好みのいい感じでした。
バンドはロビーのギター弾きの姿だけで満足でした。
案外音楽として面白く聞けたのは、
デッドとイアン・タイソンのジョイントかな。
一番印象に残った曲は上にも書いた"怒りの涙"でしたが。

>これを機会にCDで買い直す(いや、初めて買うって事だけど)つもりです。

いいですね、温故知新って感じで。
そういう感じでルーツを辿っていくというのはアリですね。
デッドだったら、あるいはバンドだったら書き込んでください。
コメントを書き込みに行きますから(微笑)。

>私って単純ですね、ライブ8でピンク・フロイド見てCD買ったし。。。

そんな事無いですよ>単純。
ただ、いつの時代のフロイドを買ったかで問題が出そうですが(笑)。
間違ってもロジャー脱退後じゃない事を祈ります(爆)。

投稿: kikka | 2005.08.03 17:39

フロイドは狂気と炎を買いました、セーフですね。
ザ・バンドも凄く好きなのでCDで買い直すつもり。グレイトフル・デッドはレコード棚に確か2~3枚あったような。。。
最近バック・トゥ・70’sな私です(^_^;)

投稿: tomtomradio | 2005.08.04 00:10

tomtomradio様>

>フロイドは狂気と炎を買いました、セーフですね。

セーフ(笑)。
逆にシド・バレット在籍時を買っていたら凄いかも(微笑)。
Wish You Are Hereはフロイドの中では一番好きです。
タイトル曲、Have a cigar、Shine on you Crazy Diamondと、
捨て曲が全くないという希有なアルバムですな。

>ザ・バンドも凄く好きなのでCDで買い直すつもり。

買い直してください。
そちらに再び乗り込む日も近いか(笑)。

>グレイトフル・デッドはレコード棚に確か2~3枚あったような。。。

結構、やられそうな気がしますね>tomtomradioさん(笑)。
あのユルユル感にはまると、抜け出せなくなりますよ。

>最近バック・トゥ・70’sな私です(^_^;)

そのケは僕もありますね。
ただ、決してバック・トゥ・80’sにはならないんですよね(笑)。

ホント、80年代って僕にとっては「空白の10年」になりつつあります。
80年代にデビューしたアーティストでいまでも聞いてるのって、
たぶんU2とローリー・アンダーソン、The Smithsくらいかなぁ。
Sonic Youthもそうかもしれませんが、
彼らはDirty以降に触れたんで対象外ですかね。

投稿: kikka | 2005.08.05 01:38

>kikkaさん

>逆にシド・バレット在籍時を買っていたら凄いかも

自分は"Wish You Were Here"あたりからシド・バレットまで遡ったくちです。
20歳くらいの頃、スラッシュ/ハードコアを聴く一方で、シド・バレットのソロ・アルバムがヘビー・ローテーションでした。(笑)
フロイドだったら、"Meddle"(おせっかい)が一番好きですね。

>決してバック・トゥ・80’sにはならないんですよね

同じくですね~。

Sonic Youthは、"Goo"からでした。
あの頃、新宿のロフトっていうライブハウスで来日公演とかやってたんですよね。
今考えると、凄いな。(笑)

投稿: piouhgd | 2005.08.05 12:04

pio様>

>"Wish You Were Here"あたりからシド・バレットまで遡ったくちです。

僕は渋谷陽一のラジオから聞いたクチかなぁ。
当然、中学生くらい(The Wallの辺り)からフロイドにハマってたけど、
CDで再発されるまではなかなかシドのアルバムって手に入らなかったから。

>20歳くらいの頃、スラッシュ/ハードコアを聴く一方で、シド・バレットのソロ・アルバムがヘビー・ローテーションでした。(笑)

嗚呼、シドと共に聞いていたのって英国産のレコードだったかなぁ。
あるいはRy CooderとかDeadにハマリ始めていた時期かも。

>フロイドだったら、"Meddle"(おせっかい)が一番好きですね。

「吹けよ風、呼べよ嵐」ですな。
そういえばポンペイでのかの曲も凄かったなぁ。

>新宿のロフトっていうライブハウス

ロフトってまだあるの?
何回かいった事あるけれど、胡散臭い場所でしたね(笑)。
ビリー・ブラッグとか見に行った覚えがあります。
確か、アドバイサーか何かで花房浩一が一緒にいたなぁ。

投稿: kikka | 2005.08.05 12:16

>kikkaさん

>ロフトってまだあるの?

移転したらしいですが、まだ新宿にあるらしいですよ。
行ったことないんですけどね。
あそこでは、Sebadohを見ました。
なぜかオープニングが、三上寛!

Festival Expressは一体どこへ?(笑)

投稿: piouhgd | 2005.08.05 13:04

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