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2005.05.08

97年10月26日の出来事

 以前、僕はとあるサッカー関連の紙媒体に寄稿していた事がある。その縁で先方から依頼を受けて、97年のフランスW杯アジア二次予選の日本で行われた全試合を取材した。

 10月26日に国立競技場で行われたUAE戦。この試合はカザフスタンとウズベキスタンで二試合連続で引き分けに終わり、W杯本戦進出もギリギリ通るかどうかの状況で行われた。代表監督の加茂周がJFAに更迭され、岡田武史コーチが監督に格上げされて初めて日本国内で指揮を執った一戦でもあった。周囲にはピリピリとした緊張感が漂っていた。
 試合結果は日本がホームゲームの利を活かせず、1ー1の引き分けに終わった。先制点を奪った日本だったが、ゴール前での相手のセットプレーへの対処が緩慢で、その隙を突かれて同点に追い込まれた。あとは引き分け狙いのUAEの守備を崩す事ができなかったという、非常に不満の残る試合展開だった。
 試合結果に不満を持った一部の観客が暴れだし、イスやペットボトルや卵などが投げつけられるという日本サッカーの歴史上でも希に見るような騒乱状態に陥ってしまった。日本代表の送迎バスが発車を妨げられ、同時に関係者も会場を後にする事ができないくらいに国立周辺は混乱した。結局、現場から出られたのは、9時の試合終了から3時間以上経った12時を回ってからと記憶している。

 その時、マスコミ各社の担当記者は何をしていたか。「暴動が起こった」と言って試合の総評そっちのけで殆どの人間が現場に殺到していく。どうやら試合の結果そのものを振り返る事よりも、暴動を取材する事に意義があると記者が判断していた様子。記者の中には「こんな場面にはなかなか遭遇できないぞ」とか「こっちの方が面白い」などと言う輩もいて、それこそ【祭り】の状態。
 結局、そこにいた記者達の大半は、サッカーの試合そのものよりも、尾ヒレに付いたような話がより面白そうならば、そちらに向かい集中した訳だ。口悪く言えば、よりセンセーショナルで、より一面が奪取できる様なネタに興味を持ち、優先していた訳だ。
 サッカーファンにとっては暴動よりも”日本がW杯に初出場できるかどうか”の方が重要だったハズだが、世間一般に目を向けさせるには暴動の様子を事細かに取材する方が重要だったのか。仮に暴動の記事を載せるとして、日本が窮地に陥ったという事実検証を横に追いやる程の価値があったのかどうか。7年経った今でも疑問に思う。

 翌日の全てのスポーツ各紙では、国立での騒ぎの記事と写真が一面を賑やかにしていた。

 JR西日本の記者会見、喚き散らしている記者達を見ていたら真っ先にこの事を思い出した。あの頃から、大局的に見た場合の優先順位を全く考えずに、ただ「面白きゃいいんだ」と言う記者達の態度は全く変わっていない。

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コメント

こんばんは。
僕の中のkikkaさんのイメージはやはり「記者」
それは、PASSを首から提げた写真を見たからだと思うのと。
文章力が本物だな・・・って。
素人がkikkaさんの日記を読むと本を読んでいるような感覚に陥る。
旨く説明できないんですが。

JRの脱線事故の話題も・・・脱線した原因。
これからの事よりも、横道に反れた報道が多い気がします。
でも、正面からの報道も大切ですが
側面から、色々な角度からの報道も
家族の心境、会社側の心境・・・色々な事がわかり
事故全体に色々な意味が見出せる気がします。

でも、ボーリング報道等・・・
そればかり流れている気がしました。
kikkaさんのサッカーの記事読んでみたかったです。

投稿: ヒロノブ | 2005.05.10 19:00

ヒロノブ様>

あら、今日はカタカナなのね(笑)。

>でも、正面からの報道も大切ですが
>側面から、色々な角度からの報道も
>家族の心境、会社側の心境・・・色々な事がわかり
>事故全体に色々な意味が見出せる気がします。

いろんな部位にアンテナを張る事は構わないんですよ。
ただ、余りにもドラマチックな部分に目を奪われすぎていて、
優先順位を謝っているとしか見えないんです、この過熱報道は。
前記事でトラバしていただいた方が指摘してますが、
このままだとJR西日本側に自殺者が出るんじゃないかと言うくらい
畳みかけるような「揚げ足取り」が応酬しております。
やっと具体的な現状報告が出てきたので、
多少は沈静化すると思われますが、
他者を挙げて批判するだけが報道の本筋じゃないだろうと。
それに感情に押し流されて、
判断力が無くなっている危険も見えてきたりします。

>kikkaさんのサッカーの記事読んでみたかった

残念ながら、もう書けませんね。
世間の時間の進みって早いもので、追いつけません(苦笑)。
こうやって"いっちょかみ”してるくらいがちょうどいいんですよ。
それからすると、現場にいる人間は身体も慣れているだろうから、
もっともっとキチンとした記事を書いて欲しい。
それが彼らに対する願いであったりします。

投稿: kikka | 2005.05.10 20:11

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