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2005.04.27

Nine Inch Nails / With Teeth

Trent Reznor率いるNine Inch Nailsのほぼ6年ぶりの新作。
"今年の私的ベストアルバム" は決まったなという感じ。
全世界の人達に聞いてもらいたい快心の出来。
そして「Rock史上希に見る大傑作」だと勝手に断言してしまおう。

splashcover

Nine Inch Nails "With Teeth"

  1. All the love in the world
  2. You know what you are?
  3. The Collector
  4. The hand that feeds
  5. Love is not enough
  6. Every day is Exactly the same
  7. With teeth
  8. Only
  9. Getting smaller
  10. Sunspots
  11. The line begin to blur
  12. Beside you in time
  13. Right where it belongs
  14. Home(Bonus Track)
  15. Right where it belongs V.2( Bonus Track…UK & JPN)
  16. The hand that feeds(Bonus Track…JPN Only)

 先行シングルである"The hand that feeds"がキャッチーかつ激しい曲調だったので、ピアノ&ベース&打ち込みで進んでいくシンプルな曲"All the love in the world"でアルバムが始まった時は少々戸惑った。だが、あっさりと進んでいく中でも、これからTrentが紡いでいこうとする物語に対しての期待感を膨らますような効果としては、十分すぎるほどのものがある。そして2曲目では、そのアッサリ感が息つく暇もなく転調し、怒濤の音の洪水が押し寄せてくる。

 今回のアルバムは、Woodstock94でイメージ付けられたようなハードな側面もあれば、前回のLive Album"And all that could have been"の様なアコースティックをフィーチャーしたような静かな曲もある。
 全体的なトーンとして感じられたのは、非常に温かい、慈愛に満ちているという感覚である。今までのようにDTM然とした感覚ばかりではなくて、人間の手で鳴らす楽器(ギターとかピアノとかドラムとか)の音がそのまんまの形で上手く調和している効果かななんて事も感じたり。音的にアバウトな部分もかなり許容しているが、だからといって決していい加減ではなく、却って音とアルバムを作っていく事の楽しさを謳歌し、充実感溢れる風なイメージがある。

 例えば、彼らを一躍スターダムにのし上げた"The downward spiral"。まるで世間への嫌悪感をひたすらクローズアップするようだった。
 例えば、その5年後に発売された2枚組 "The fragile"。悪循環の螺旋階段=downward spiral から抜け出そうとしながらも、断崖絶壁に追い込まれている様なギリギリ感が感じられた。タイトルが示す通りに、Trentの自体が壊れやすい心境になっている事が窺われたりした。

 そのいずれとも今作は違う。曲名からして今までは使用した事がないような「Love」という単語がいくつか見られるし、曲調も呆気にとられるくらいに前向きである。これはNailsを追っかけてきたファンだったら誰もが共通して思った第一印象なのではないだろうか。

 前作から今作に至るまでの6年間、Trentの周囲にはいろんな事があったようだ。マネージャー&レーベル(=Nothing)との権利問題とか、あるいはRock界にありがちな破滅の兆候だとか、いろんな事に巻き込まれたようだ。最近のインタビューでも語っていたが、心身ともにかなりギリギリの状況だった様子だ。
 元々が真面目な人で、アルバム制作にしても完全主義者ぶりを発揮したり、息がつまるような生活を強いてきただけに、一気に袋小路まで追いつめられたんだなという印象がある。


 だが、彼はボロボロになり破滅する事をすんでのところで回避して、新しいアルバムを提示してきた。

その事をひとまずは喜ぼうではないか!


 これからアルバムをしばらく聞いていくと、第一印象からはかなり変わってくると思う。気が付いた事があったら、引き続き書き込みたいと思う。

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コメント

早くも今年の一番決定ですか!(笑)
純粋な新譜では、まだそこまでインパクトあるのに出会ってないですねえ、今年は。
買っている新譜が少ないというのもありますが。
とりあえず、CD屋で見かけたら試聴してみます。

投稿: piouhgd | 2005.04.28 00:47

>早くも今年の一番決定ですか!(笑)

まぁ、僕も新譜自体は買ってないんでねぇ(笑)。
でも、1年間通しで聴くアルバムにはなりそうです。

イイ意味で予想を裏切られましたね。
あの淡々とした1曲目で勝負あり、
ファンにとっては捨て曲なしに聞こえましたもの。

投稿: kikka(Mac屋の店員) | 2005.04.28 02:15

まだ聴きこんでないので第一印象だけですが、正直言うと、自分が思ってたような感じではなかったです(悪いという訳ではないです
よ)。フラジャイルの系統を期待してたのですが、結構とっつきやすい感じの曲が目立ってるような感じと言いますか。今から聴きこんで良さがどんどん解るんじゃなかなぁと思ってます。

投稿: 爆発男! | 2005.04.29 00:49

爆発男!様>

いつもお世話になっております(笑)。

>結構とっつきやすい感じの曲が目立ってるような感じと言いますか。

それってTrentの心境の変化に影響されての事でしょう。
ただ、あのアルバム構成力は現代では随一だと思いますね。
3日間聴いた感じでは、
前後の曲の繋がりの密接度が気になりました。
あの曲順だからこそ、一枚を通しで聴かないとダメだと感じました。
あれがバラバラだったら、逆に落胆していたかもしれません。

投稿: kikka | 2005.04.29 01:53

ちょっと補足も含めて、さっそく書いてみます。
メッセージの方と重複するところもありますが、お許しを。
まず、お断りしておくのが、ファーストアルバムしか聴いたことが無いので比較の対象がそれしかないことと2、3曲かいつまんで試聴した程度だということです。

まず、感じたのが生々しさですね。
ロックっぽさを感じました。
ファーストの頃って、まだ80年代を引きずっているというか、ボディビート的な軽さがありますよね?
今はあの頃より機材的にもソフトウェア的にもずっと良くなっているでしょうし、それを扱う技術面でもかなり向上しているでしょう。
何より金を掛けられる環境にもあるでしょうし。(笑)
ま、そういった感じで生演奏とデジタルが違和感無く結びついているなと思いました。
多分、ファーストの頃が今のような感じだったら、もうちょっと興味を持っていたでしょう。
今、日常的に聴くには、自分にはちょっとシリアスすぎる気もします。
もうちょっとちゃんと聴いてみたいなというのもありますけどね。

こんな感じですが、どうですか?

投稿: piouhgd | 2005.05.05 00:37

はじめまして、TELLといいます。
NINについての記事があったのでトラックバックさせていただきました^^
シングル「The hand that feeds」は生命力にあふれていて今までのNINと違ったので驚きましたが、聴き込む度に名作だと実感しています。
まさかトレントから「LOVE」という言葉が聞けるとは…^^;
衝撃という点では「the downward spiral」のほうが上ですけど。

投稿: TELL | 2005.05.16 18:46

piouhgd様>

ゴメンなさい、AECの話をしてる場合じゃなかったですね(笑)。
"ラブレター"もあったから、すっかり記憶の彼方に(苦笑)。

>まず、感じたのが生々しさですね。
>ロックっぽさを感じました。

渋谷陽一が前作の「the fragile」の時に、
Rockという音楽の最後の希望みたいな書き方をしてましたが、
たぶんRockが持っている斬新的、衝動的、その他いろいろを、
兼ね備えている数少ないミュージシャンだと思うんですよ。
でも、今回の場合は今までの路線から外れているか否かは別にして、
上の要素+ポジティブな攻撃性まで加わってきている。
(※前は攻撃的でも、どこか厭世的なところが強かった)

BillboardのAlbumチャートでなんと初登場1位になりました。
Nailsがチャート1位になる事は、
アメリカにもまだまだ希望があるなと素直に感じましたが。

>自分にはちょっとシリアスすぎる気もします。

シリアスだけど、深みにはいると抜けられなくなりますよ(笑)。
できればAlbumを通しで聴いていただきたいですね。

投稿: kikka(Mac屋の店員) | 2005.05.16 20:07

TELL様>

初めまして。
TBありがとうございました。

>聴き込む度に名作だと実感しています。

同感ですね。
これを批判する人がいるとするのならば、
何故?と小一時間問いつめたくなるくらいな出来です。
下手すると、グラミー取れるんじゃないかとまで思いましたが。
(※たぶん、そんなモノには興味がないでしょうが>Trent)

>衝撃という点では「the downward spiral」のほうが上ですけど。

僕もthe downward spiralから聞き始めたクチですが、
どうなんでしょう?
"アッと言わせた"感は、実は今回の方がデカかったですね。

ただ、とんでもないAlbumだと感じてはいるのですが、
全体像が上手く捉え切れていないというか。
だから、こればっかりは聞き続けていくしかないようですね。

※また、そちらにも書き込ませていただきます。

投稿: kikka(Mac屋の店員) | 2005.05.16 20:23

>ゴメンなさい、AECの話をしてる場合じゃなかったですね(笑)。

自分としてはそっちの方が興味あるので、まったく問題ないです。(笑)

>"ラブレター"もあったから、すっかり記憶の彼方に(苦笑)。

ご健闘を祈ります。
と一応言っておきます。(笑)

で、謹んで通して聴かせていただきました。
意外と言っては失礼ですが、退屈することなく聴くことができました。
歌詞のことやアルバムの構成などに言及できるほど聴き込んではいませんが、聴いてみて、イメージ変わったのは確かですね。

ただ、個人的には音響的な面白さ(ま、ちょっとベクトルは違うかもしれませんが)を感じられなかったのと、kikkaさんやコメントを寄せている方達との温度差は、正直あります。
この辺はやっぱり好みの問題なんで、いいとか悪いとかじゃないですけどね。

>渋谷陽一が前作の「the fragile」の時に、
>Rockという音楽の最後の希望みたいな書き方をしてましたが、

話はそれますが、自分はこの"Rockin' On"的な価値観がちょっと苦手です。
「ロックは死んだ」とか言われても。(笑)
死んでようが死んでいまいが、自分にフィットするものをチョイスするだけの話です。

>たぶんRockが持っている斬新的、衝動的、その他いろいろを、
>兼ね備えている数少ないミュージシャンだと思うんですよ。

ああ、確かに今少ないかもしれませんね、そういう感じの人って。
自分は、衝動性とか攻撃性を求めてしまうと、ハードコアとかスレイヤーとかそういうとこに行ってしまいます。(笑)
だから、意外とこういう感じのって聴いてこなかったんですよね。
近いところにはいたんですけど。

投稿: piouhgd | 2005.05.16 23:38

piouhgd様>

いやいや、どうもどうも。

>自分はこの"Rockin' On"的な価値観がちょっと苦手です。
>「ロックは死んだ」とか言われても。(笑)

僕はNHK-FMの渋谷の番組を聞いて育った人間ですが、
Rocki'n'on的価値観も持っていますが(苦笑)、
発言は例えとして提出しただけとお考え下さい。

>死んでようが死んでいまいが、
>自分にフィットするものをチョイスするだけ

それでいいと思います。
渋谷の発言ってのは多分に業界的な観点が考えられます。
レコード業界でのRockの位置づけが、
昔に比べると相当難しくなっているのではないかと。
ラップ以降の黒人音楽の隆盛がありますし、
そういうストリート系の音楽がリアリティを持って聞ける。
Nirvanaなどはロックの幅を広げたかもしれないけれど、
世界はどんどん細分化され、
一つ一つの求心力は小さくなっていたり。

でも、Trentはそういった状況とは一戦を画してます。

渋谷の発言ってのは、
偶然にもその状況を端的に表したものかと思ってます。

投稿: kikka(Mac屋の店員) | 2005.05.17 01:02

>発言は例えとして提出しただけとお考え下さい。

ええ、もちろん。
それについて否定したりとかそういう意図は全くありません、こちらも。

>レコード業界でのRockの位置づけが、
>昔に比べると相当難しくなっているのではないかと。

位置付けすることに意味はあるのかといってしまえばそれまでですが、まあ、それが彼らの仕事ですからね。(笑)

>Nirvanaなどはロックの幅を広げたかもしれないけれど、
>世界はどんどん細分化され、
>一つ一つの求心力は小さくなっていたり。

幅を広げたというよりも、もともとあったものに多くの目を向けさせてって感じですかね?
特に新しいことをやってたわけではないですしね。
でも、確かに大きな影響力でしたよね、Nirvanaが売れたのって。

>でも、Trentはそういった状況とは一戦を画してます。

この辺は、門外漢の自分には今ひとつ分かりませんが、なんとなく距離を取ろうとしているのは分かります。

投稿: piouhgd | 2005.05.17 12:49

>位置付けすることに意味はあるのかといってしまえばそれまでですが、
>まあ、それが彼らの仕事ですからね。(笑)

これね、フェスティバルの成り立ちとか考えると、
相当に深刻な話なのかもしれません。
いつものレコード屋さんの受け売りだけれど、
日本もアメリカもRockというジャンルは厳しいモノがあるようで。
先鋭的な事をしている向きも当然いるし、
一人一人は安定したセールスとかを示しているけれど、
全体的なレコードセールスの低下は、
Rockの影響力の低下をも示唆しているのではないかと。
アリーナクラスでのLiveの激減というのも気になる話ではあります。
フェスティバルという形式にしないと
人が集まらなくなっているというのも気になります。

>もともとあったものに多くの目を向けさせて

そうですね。
斬新さは確かになかった。
でも、おっしゃる通りにNirvanaなんかは異彩を放っていたかも。

>なんとなく距離を取ろうとしているのは分かります。

Trent=NINの作品は、常に緊張感いっぱいだったりします。
Rage Ageinst The Machineがなくなって以来、
緊張感をあそこまで保っているバンドがいくつあるか。
少なくともアメリカのバンドでは見当たらないような気がします。

投稿: kikka(Mac屋の店員) | 2005.05.18 01:01

>フェスティバルという形式にしないと
>人が集まらなくなっているというのも気になります。

これもなかなかつらいものがありますよね。
こういった形式で、いつまで続けられるのか。
同じことの繰り返しでは、いつか飽きられるでしょうし。
個人的には、あまり規模の大きなライブを行うようなアーティストの多くは興味がありませんが、1つのマーケットとしてみれば、そういったアーティスト達が頑張ってくれた方が、よりマイノリティな音楽の情報も伝わりやすいんですよね。
特に日本は、世界中の音楽が手に入りやすい唯一の国ですからね。
業界の都合とかはどうでもいいんですけど、うまく機能してくれるとありがたいのは確かです。


>Rage Ageinst The Machineがなくなって以来、
>緊張感をあそこまで保っているバンドがいくつあるか。

特に好きなわけじゃないんですが、レイジもいいバンドでしたよね。
”怒り”を音で表現できるという。
日本でも、アンダーグラウンドレベルではいるんでしょうけど、メジャーになるとJ-Pop化してしまうので、ろくなことになりませんね。
って、すっかりNINから離れちゃいましたね。(笑)

投稿: piouhgd | 2005.05.18 12:48

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TITLE:WITH TEETHARTIST:NINE INCH NAILS(2005/05/03:Interscope Records /US:B000455302)・nin.com(English)・UNIVERSAL INTERNATIONAL 公式ページ(Japanese)何かが満ちている。今までのNINにはなかった何かが。機械を使ったいわゆる「打ち込み」のサウンドには温かみがない... [続きを読む]

受信: 2005.05.16 18:36

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